ガソリンベーパー」とは、ガソリンが蒸発して気体となった蒸気(Vapor)のことです。
ガソリンスタンドなどで感じられる独特なにおいの正体で、PM2.5(微小粒子状物質)や光化学オキシダントの原因物質のひとつである揮発性有機化合物(VOC)です。
※揮発性有機化合物(VOC)とは、揮発性を有し、大気中でガス状となる有機化合物の総称です。(VOC:Volatile Organic Compoundsの略)
(動画:自動車への給油時に放出される「ガソリンベーパー」を特殊な赤外線カメラで撮影)
「ガソリンベーパー」は、次のような場面で大気中に放出されており、これを抑制することによって、大気環境の更なる改善が期待されます。
NOx、粒子状物質については、自動車排出ガス規制や九都県市が独自に取り組むディーゼル車対策により、また、SOxについては燃料規制により大幅な低減が図られています。
しかし、光化学オキシダントの環境基準の達成は依然厳しい状況にあり、PM2.5については、光化学オキシダントよりも環境基準の達成状況は良好ですが、気象の影響により変動します。このため、引き続き原因物質の抑制が重要です。
(図:PM2.5等の発生源と生成のしくみ)
ガソリンベーパー対策は、平成14年の中央環境審議会答申において、PM2.5や光化学オキシダントの原因物質であるVOCの排出抑制対策として検討するとされていましたが、具体的な対応はなされてきませんでした。
そのため、平成26年11月12日に開催された九都県市首脳会議において、ガソリンベーパー対策に有効なORVR※車の早期義務付けや啓発活動を九都県市一体となり取組むことに合意し、国への要請や啓発・情報発信等の取組を進めてきました。
※ORVR:Onboard Refueling Vapor Recovery(車搭載型燃料供給時蒸気回収装置) 九都県市では、国内でのORVR車の普及に向けて、国へ要請等を行いました。
平成26年11月13日、ORVR車の早期義務付けを要請しました。
平成27年3月に環境省が実施した「微小粒子状物質の国内における排出抑制策の在り方について(中間取りまとめ)(案)に関する意見募集」に対して、九都県市として、ORVR車の早期義務付けに関する意見を提出しました。
こうした働きかけもあり、平成29年5月31日に、中央環境審議会により「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十三次答申)」の答申がなされ、その中で今後のガソリンベーパー対策の方向性が示されました。
今後も九都県市は、国や業界の動向を見据えながら引き続きガソリンベーパー対策に取り組んでいきます。
現在、タンクローリーからガソリンスタンドにガソリンを荷卸しする際に生じるガソリンベーパーについては、九都県市を始めとする都市部の自治体を中心に、条例に基づいて対策が実施されています。今後は、これに加えて給油時と駐車時における排出対策が全国的に進められます。
欧州やアジア諸国では、自動車への給油時に給油口から大気中へ放出されるガソリンベーパーを給油機で吸引し、地下タンク内に回収するという対策(この対策は「StageⅡ」と呼ばれています)が行われているのに対し、日本ではほとんど行われていません。国では、今後StageⅡに対応した給油機の導入を促進することとしています。
StageⅡ対応型給油機のイメージ
タンクローリーからガソリンスタンドの地下タンクにガソリンを荷卸しする際に、地下タンク内からガソリンベーパーが出てきます。このガソリンベーパーをタンクローリー内に回収する設備を設けることで、ガソリンベーパーの大気中への排出を抑制することができます。この荷卸時の対策は「StageⅠ」と呼ばれており、九都県市やその他一部の自治体では、条例などにより、StageⅠを導入することを求めています。